一級塗装技能士とは
国家資格である技能検定制度の一種で、都道府県職業能力開発協会が実施している
技能検定は、「働く人々の有する技能を一定の基準により検定し、国として証明する国家検定制度」です。技能検定は、技能に対する社会一般の評価を高め、働く人々の技能と地位の向上を図ることを目的として、職業能力開発促進法に基づき実施されています。特級、1級および単一等級、2級、3級に区分するもの、単一等級として等級を区分しないものがあります。試験は実技と学科が行われ、実技試験は100点満点の60点以上、学科は100点満点の65点以上が合格基準です。2級の場合は2年以上、1級の場合は7年以上の実務経験がなければ受験することができません。
試験についての詳細は職業能力開発協会のホームページでご確認ください。
年に1度しか受験することができない
技能士検定は年に1度しか行われません。
毎年決まった時期に行われています。
塗装の場合は梅雨時に実技試験が行われるため、パテ作業の乾燥時間がかかるなど時間を有効に使うことが問われます。
限られた時間と材料の中で色の調色やパテ作業など、現場で作業する場合とは違う緊張感があります。
最低限の材料しか用意されていないため、一度失敗すると取返しはつきません。
そのために慎重に作業を行う必要がありますが、慎重になりすぎると制限時間がなくなります。
このバランスが最も試験には必要とされます。
ある程度の試験内容は過去問題などから推測できます。
また、対策として事前講習が行われているので本試験を受験する前にどのような作業を行うのか予行演習することも合格への近道です。
本試験の前日に行われる事前講習について
多くの方が事前講習に参加しています。本試験の内容を1度経験できるというのは大きなアドバンスとなります。
また、使用する機器などは会場の物を使用しなければなりません。
調整方法など普段使用するものとは異なるため使い勝手も違います。
調色については最低限の量しか用意されていないため、色を少しでも多く入れすぎてしまうと合格基準には戻せません。
私も事前講習に参加した際に青を入れすぎたために失敗をしました。
本試験ではそれがトラウマとなってしまい、調色作業に予想以上の時間をかけてしまいました。
年に1度しか行われていないため、1度の受験で合格を目指したい方は事前講習を受けることをお勧めします。
本試験について
試験の内容について説明させていただきます。
事前講習に参加していたので精神的に落ち着いた状態で受験できる予定でした。
ですが使用する道具(刷毛)が規定されているものと異なるという理由で使用できないトラブルがありました。
事前講習の際に使用する道具(パテヘラや刷毛など)は確認していたのですが、検査官による認識の違いです。
事前講習の際に許可を得ていたことを伝え他の検査官にも確認してもらいましたが、使用できないとのことでした。
仕方なく大きな刷毛で鋭角の細かい箇所を塗装しなければならない状況に戸惑いながらの受験。
本試験を受験する方は道具の確認が大切です。
使用できるヘラや刷毛の大きさ、本数などは指定されています。
そのため、場合によっては試験当日に使用できないものがあるので事前講習を受講して道具の確認を行うことも大切です。
道具を揃えるのも大変な作業になるため、大塚刷毛さんや好川産業さんから実技試験用の工具セットが販売されているのでそちらを購入するのも良いと思います。
私が受験した当日はあいにくの雨天だったため、パテの乾燥に時間がかかりました。
パテ作業が乾燥しないと課題図の作成ができないため、規定量のパテを厚付けしてしまうと時間が足らなくなります。
そのため、時間を優先させるために多少薄付けになっても良いと事前講習の際にアドバイスをいただいたのでそのように対応しました。
うちわで仰ぎながら乾燥を促し、その間に色の調色作業を行います。
吹付作業はタイルガンによる玉吹き仕様とスプレーガンの2種類を行います。
地域によってはタイルガンの吹付ではなく、代わりに多孔質ローラー塗りの試験が選べるようになっています。
試験で作成した課題図などは持って帰ることもできるので、記念に持って帰る人もいました。
私もタイルガンの吹付はその場で満点だと言ってもらえたのと、色見本のサンプルを作成する際に役立つと思い持って帰りました。
一級塗装技能士=塗装作業が上手ではない
一級塗装技能士が塗装するので他社よりも塗装技術があると営業している会社があります。
はたしてそうでしょうか?というのが私の答えです。
私が一級塗装技能士検定に受験したのはそれがきっかけです。
一級塗装技能士に合格した者でも下手な塗装をする方がいます。
一級塗装技能士の資格を持っていない者でも、丁寧に上手に塗装ができる職人さんはたくさんいます。
結論から言わしてもらうと、「一級塗装技能士=塗装が上手」では決してないということです。
資格を持っていない者がそれを言うと妬みにしか聞こえず、また説得力がありません。
今回、受験して無事に合格できたからこそ言いたいことがあります。
それは技術があるというよりは向上心を持った者であるということです。
試験内容は普段の塗装の現場で活かせることは多くありません。
学科試験についても、ほとんどが現場作業では必要のないものです。
ですので、受験勉強をしっかりとしなければ学科試験に合格もできません。
ただ、塗装の技術を磨こうとする姿を見ると技術とかではなく、塗装に対する姿勢や技量の向上心をすべての受験者から感じました。
持っていないよりは持っている方がいいです。
また、一級塗装技能士に合格することで自信を持てる人もいるでしょう。
将来、親方を目指している職人さんは受験して合格を目指して欲しいと思います。
合格すると嬉しいことも
技能検定に合格すると組合からお祝い金をいただけることがあります。
私が所属している組合からは資格取得に対してのお祝い金をいただくことができました。
金額などは取得した階級によって異なります。
私が所属している東播建設労働組合は小さな組合ですが、とても親切で兵庫県で建築作業をされている方にお勧めする組合です。